3月18日、広島高等裁判所第4部(裁判官:横溝邦彦、鈴木雄輔、沖本尚紀)は、四国電力伊方原発3号機の異議審において、昨年1月17日に同裁判所が出した運転差止決定を取り消し、運転を認める決定を出しました。
伊方原発をとめる弁護団と伊方原発をとめる会は連名で「声明」を出し、今回の決定は、原発の危険性の立証責任をすべて住民に課すという不可能を強いるもので、1992年の伊方原発1号炉の最高裁判決にも違反する、きわめて特異で不当なものであると厳しく断罪しました。
2021年3月18日
声 明
伊方原発をとめる弁護団
伊方原発をとめる会
- 本日,広島高等裁判所第4部(裁判官:横溝邦彦,鈴木雄輔,沖本尚紀)は,四国電力伊方原発3号炉の異議審において,昨年1月17日に同裁判所が行った運転差止決定を取り消す決定をした。
- その理由は,原発の安全性に影響を及ぼす大規模自然災害の発生の時期や規模については現在の科学的知見では具体的に予測できないことを認めながら,その疎明責任を住民に課し,住民が具体的危険を疎明できない場合には運転差止は認められないとするものである。
- この決定は,住民に不可能を強い,原発の運転差止を認めないとする極めて特異な不当決定であり,主張・立証責任を国に課した伊方1号炉についての1992(平成4)年10月29日最高裁判決はもとより,従来の判例にも明らかに違反するものであって,到底是認されるものではない。
- 他方,本日,水戸地方裁判所(裁判官:前田英子,髙田卓,山本隼人)は,日本原電東海第二原発について,その運転を差し止める判決をした。
- その理由は,PAZ,UPZ内に94万人余の住民がいるのに深層防護の第5の防護レベルである避難計画等が極めて不十分であるとするものである。
- この判決は,その余の争点について原告の主張を認めなかった点において正当ではないが,深層防護の第5レベルの不備を理由に運転差止を認めた点において画期的であるばかりか,上記広島高裁決定とは異なり,事業者が基準と基準適合性について主張立証責任を尽くさない場合には具体的危険が事実上推定されるとしている点において正当である。特に,仮処分事件において松山地裁,高松高裁も避難計画の不備を指摘している佐田岬半島の約5000人もの住民が避難できない伊方原発について,大いに力になる判決である。
- 現在,伊方3号炉について,松山地方裁判所で運転差止訴訟が係属中であるが,私達は,引き続き,伊方3号炉の運転差止のため,最大限の努力を傾注するものである。
以上