日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の代表委員で、広島県原爆被害者団体協議会(広島県被団協)の理事長でもある坪井直(すなお)さんが、10月24日に96歳で逝去されたことは、その業績とともにテレビ・新聞で大きく報道されました。しかし、その坪井さんが伊方原発運転差止訴訟の第4次原告であることは余り知られていません。そこで、第4次提訴に当たって坪井さんから送られたメッセージを以下に掲げてご紹介しつつ、心からの哀悼の意を捧げます。
坪井さんのメッセージ
私は、広島の原爆被爆者の一人です。爆心地より約1キロメートルの道路上で被爆しました。全身大火傷で、皮膚は破れ、血だらけの姿になり、30分後には半裸で何も分からずうろうろと避難しました。その後の肉体的精神的苦痛は筆舌に尽くし難いものでした。
幸運にも12度の入退院を重ねながら、3度の危篤状態を乗り切っています。現在二つのガン、狭心症、再生不良性貧血に悩まされています。なお、精神的な不安、苦しみでノイローゼ気味で、日夜悪戦苦闘を強いられています。原子爆弾による被害は、破滅以外の何物でもありません。
殊に放射線の被害は、いつ、いかなるときを問わず生涯つづき、根本的な治療法はありません。さらに被爆による疾病が、いつ発生するか分かりません。また、2,3世についても不明な点が多い。今なお原爆病での闘病生活の方も多い。
以上、原爆による被害について概説しましたが、詳しくは訴状等を参照頂きたい。
私たち原爆被爆者は、被爆後69年間放射線に苦しめられてきました。だからこそ、原発事故がもたらす放射線被害について深く憂慮しています。原爆による被害も原子力発電所の事故による被害も、二度とあってはなりません。そのためには核兵器の廃絶とともに、原子力発電所の再稼動を許さず廃炉に向かうべきだと訴えます。
困難があっても、私たちはこの訴えを諦めることは、ありません。今後ともネバー・ギブアップで邁進します。
司法関係者に伏してお願い申し上げます。危険な伊方原発を稼働させないよう、運転差し止めを認めて下さるようお願い申し上げます。
2014年6月24日
坪井 直
長崎の谷口さんも第4次原告
ところで、この機会に伊方訴訟には坪井さんとともに多くの被爆者が参加していることをお知らせします。いまは故人となられましたが、背中が焼けただれたご自身の写真を掲げて国連で核兵器の廃絶を訴えられた谷口稜曄(すみてる)さんや戦後6千人の被爆者の診察をされた肥田舜太郎さんも第4次原告でした。現存者では、日本被団協の代表委員の田中熙巳(てるみ)さんや同事務局次長の藤森俊希さん(核兵器禁止条約の採択された国連会場でサーロー節子さんと握手した写真で著名)も原告です。そして北海道から鹿児島まで多くの被爆者団体の役員さんも参加されています。いずれの方も原爆も原発もNOと訴えていらっしゃいます。