第27回口頭弁論  四電側に再反論し、避難計画の不備と人権侵害について訴える

秋空のもと、粛々と松山地裁に向かう原告団

 11月2日(火)、14時半より松山地方裁判所にて伊方原発3号機運転差止訴訟の第27回口頭弁論が開かれました。

 原告側は準備書面2通(93)~(94)を提出し、被告・四電側は準備書面(21)を提出しました。また、原告の河野修三さん(西予市)が意見陳述をし、裁判所が次回の口頭弁論期日が2月24日(金)であることを双方に確認して1時間弱で閉廷となりました。

準備書面(93)「経験式のばらつきの考慮についての再反論」

 薦田伸夫弁護団長が、前回、四電側が提出した準備書面(20)に対して再反論を行いました。これは、原告側「準備書面(85)」で、伊方原発3号機の基準地震動を設定する際、規制庁が定めた地震ガイドにもとづく「ばらつき」を考慮していないと指摘したことに対し、四電が地震ガイドは効力がないものだと反論したことに対する再反論です。

 「地震ガイドは行政手続法上の審査基準ではないから、地震ガイドに従う必要がない」との四電の主張が恣意的な詭弁であること、また、地震ガイドが求めている「経験式のばらつきの考慮」について、四電の「不確かさを考慮していれば、ばらつきの考慮をしなくて良い」との主張も、四電自体が依拠するレシピ(強振動予測手法)にすら反していると指摘し、「被告の主張に全く理由のないことは明白である」と痛烈に批判しています。

  準備書面(93)経験式のばらつきの考慮についての再反論公益性と福島原発事故による被害についての再反論

準備書面(94)深層防護第5層の不備による人格権侵害

 次に中川創太弁護団事務局長は、「避難計画の不備が周辺住民の生命・身体の安全に直結するものであるから原発差止請求の理由となりうる」との原告側の従来からの主張を、更にバージョンアップしました。

  原子力基本法や他の法令での法規制、今年3月の東海第2原発水戸地裁判決等も引合いに出し、特に今回は、愛媛県の広域避難計画、各市町の避難計画の問題点を個別に具体的に列挙し、伊方原発が日本中で避難が最も困難な原発であり、事実上、避難不可能な地域さえあることを実証した上で、「このような実効性に欠ける避難計画しかない状況下で伊方原発を再稼働」することが「原告らの人格権を侵害するものであり、許されない」と力強く訴えました。

  準備書面(94)避難計画の不備と人格権侵害 

非現実的な「西予市住民避難行動計画」

    住民の安全はどこへ

 西予市在住の河野修三さんは、県内で小学校教員として勤務し、退職後は地域活動やボランティア活動に励みながら、義父母が遺した伊方町内の畑で柑橘栽培をされている立場から意見陳述を行いました。河野さんは西予市作成の避難行動計画(原子力災害対策編)について、これらに実効性がないことを一つずつ丁寧に論証していきました。そして、国や県の計画や指針に縛られて、避難することが「不可能としか言いようがない」計画を立てざるを得なかった自治体職員の心情まで思いやりました。

 最後に、原発は巨大震災と違って人の力で止められると指摘し、また1970年代から続いた原発訴訟で、「司法が国の政策を厳しく問い直しておれば、福島第一原発事故は起こらなかったのではないでしょうか」として、裁判官に「未来に胸を張れるような判決」をと、説得力をもって訴えました。

 20211102河野修三さん意見陳述書

 なお、裁判所による傍聴席抽選の列に72名が並びましたが、コロナ感染状況が改善しているものの、前回と同様に傍聴席は18名(従来36席)に制限され、原告席には15名(同35席)が入廷しました。

原告としての意見陳述を終え、報告集会で感想を述べる河野修三さん
報告集会にて左から、中川弁護士、河野さん、薦田弁護士
報告を熱心に聞く参加者

記者会見・報告集会

 15時40分から30名弱の参加で、南堀端のリジェール松山にて記者会見、報告集会を行い、地元新聞記者等からの質問も飛び交いました。

 報告集会では、薦田・中川両弁護士により、上述の法廷でのやり取り、次回以降の日程、今後の裁判への構え、他地域の原発裁判の現状などが解説されました。

 また、意見陳述をした河野さんが原告席に初めて立った感想を述べました。薦田・中川両弁護士は口々に、今回の河野陳述は今後、各市町の避難計画を見直す上で、模範になるものだとして高く評価しました。

 高知、香川からの参加者から現地報告や質問もあり、また、10月24日の「伊方集会」後の伊方町内へのポスティングの際に、伊方一次訴訟で闘ったというご老人から「頑張ってくださいよ」との激励を受けたとの参加者からの報告もありました。

 松浦事務局次長から第4次原告として参加された坪井直(すなお)さんが、10月24日に96歳で逝去されたことが報告され、当時、提訴に際して送ってこられたメッセージも披露されました。

 和田宰事務局次長からは再度、三菱重工が新型炉(次世代PWR)の開発を目論んでおり、そのモデル画像が伊方原発の地形と酷似しているので、更なる四電への注視が必要との解説がありました。 

 最後に事務局より12月5日(日)の「提訴10年集会」での河合弘之弁護士の記念講演、松山市駅前での定例アクション等の案内があり、須藤昭男とめる会事務局長の「福島の現実を決して忘れてはならない」との挨拶で報告集会を終えました。