第36回口頭弁論(8月22日)報告

笑顔で法廷へと向かいます
松山地裁前を県内外の高校生らが通り過ぎていく。これらのメーッセージは君たちの将来のため!

四電側の証言に整合性なし

法廷ドラマのような見応えのある展開

 8月22日(火)、松山地裁で第36回口頭弁論が行われた。今回も、午前、午後と長時間に及ぶ口頭弁論だったが、裁判所による一般傍聴券(37席)を求めて、9時15分からの抽選に四電関係者を含めて124人が並んだ。

抽選券の発表直後の裁判所前庭(裁判所前の歩道から撮影)

 原告席には、薦田伸夫弁護団団長、中川創太弁護団事務局長、高田義之、今川正章、東翔の愛媛の弁護団諸氏に加えて、東京から只野靖弁護士が席に着いた。また、須藤昭男事務局長を始め19人の原告も着席した。

臆面もなく 3号機は650ガルで安全と

  松崎伸一証人(四国電力・土木建築部長)

 松崎証人に対する尋問は10時から昼の休憩1時間を挟んで、14時過ぎまで行われた。

 先ず、被告側代理人による主尋問で、松崎証人は、伊方原発の基準地震動がどのような方法を用いて策定されたかについて証言した。被告側の尋問は、陳述書における図表の作者を尋ねて、証人が「自分だ」と答える場面をつくるなど、証人の専門性をアピールする戦術のようだった。

 反対尋問にたった薦田弁護士は、中央構造線断層帯についての松崎証人の知識・認識の程度をはかる尋問を繰り広げた。薦田弁護士は証人に「中央構造線は日本で一番大きいか」、「世界的に比べてみるとどうか」と聞くと、それぞれに「承知しません」、「はっきりとは不明で、分からない」との返答があり、証人には「中央構造線が日本だけでなく世界最大クラスの断層である」との認識がないと判明した。また「観測記録の存在しない世界最長の活断層に対し基準地震動を策定したのか」との追及に証人は「それはそうだ」と答えた。伊方の650ガルに対して柏崎刈羽原発(2300ガル)や浜岡原発(1200~2000ガル)のガル数を聞かれても証人は「失念した、分からない、そうかもしれぬが」を連発した。

 また、薦田弁護士は、伊方原発沖に活断層があることは原発建設当時すでに共通認識となっていた事実を松崎証人に示した。1号機から3号機の設置許可申請に至るまで、四国電力が活断層を認めようとしなかったのは、「原発建設に不都合であったからではないか」との質問に、証人は「そうではない」と言い張り、3号機の設置許可申請時には、いくらか中央構造線活断層帯への対応をしたかのように答えた。これに対して、薦田弁護士は、裁判所が伊方原発の「前面海域断層群の活動性」を認定したのは2000年12月15日であり、「ようやくこれ以降、四電が認めたのではないか」と指摘した(3号機運転開始は1994年12月15日)。

 「四電の設置許可申請時の海底探査は不充分であり、より正確なデータを得るべく三次元探査を行うべきではないか」との問いかけに対し、松崎証人は「地質の変異等について三次元探査をやっても分からないので実施しない」と繰り返した。これに対して、薦田弁護士は、調査会社の報告書の「二次元ではよく分からない。三次元探査を勧める」とある証拠も示して、三次元探査をしない不当性を明らかにした。 

自信たっぷりに3号機は地震に対して安全と証言するが

  森伸一郎証人(愛媛大特定教授、地震工学)

 森証人は、愛媛県の伊方原子力発電所環境安全管理委員会の委員であり、同委員会に設置された原子力安全専門部会の委員でもある立場ながら、被告である四電側の証人として出廷した。被告側代理人による主尋問に対して、証人は、「伊方原発の地震動評価について最新の科学的・技術的知見を踏まえ、不確かさも考慮して、地震学及び地震工学的見地から適切に策定されている」と自信たっぷりに証言した。

 反対尋問にたった中川弁護士が、証人の陳述書や法廷での証言と過去の委員会での発言等との矛盾点を次々と指摘すると、森証人の主尋問での滑らかな口調は消えた。阪神淡路大震災以降の僅かな強振動のデータを基にして、最も高度な安全性が求められる原発に対する地震動評価が本当に正しくできるのか、と問われると、証人は「難しい質問、分野によって違う。」と答えた。また、緊急時の避難計画の実効性、放射能被ばくの危険性についてなど問われると、証人の回答は「私の所属する県の部会では対象外」、「必要なものはきちんとされていると思っていた」、「仕組みはどうなっているか分からない」、「明確な記憶がない」等の答えのオンパレードとなった。

 続いて、只野弁護士が基準地震動の策定において、自身で計算が出来るのかと尋ねると「計算はできない。専門家が示したものを見る。途中はブラックボックス。」と答えた。更に「10万分の1の事故発生確率といいながら、実際は100回のうち16回程度のデータ数で確実に安全だと言い切れるのか」と問われると証人は「すぐには答えられない」と回答した。

 薦田弁護士から、「県の委員として県民の安全を守る立場にありながら、四電の証人になるとはどういうことか」と問われると、証人は「県にも相談し問題ないと言われた。自分の考える通りに言えばよいと言われたので引き受けた」。また「属している県の委員会などで、今までに原子力規制委員会の判断を覆したことがあるか」と聞かれて、「質問の意味が分からない」と繰り返した後に、ようやく「それは(=覆したことは)ない」と答えた。

次回出廷の四電側証人の在廷発覚、弁護団の抗議で退廷 

 反対尋問も終了間近の16時前に、次回の四電側証人である奥村晃史・広島大学特任教授(地震地質学)が傍聴席に紛れ込んでいることに原告側弁護士が気付き、被告側代理人に厳重に抗議した。奥村氏はそのまま居座ろうとしたものの、結局のところ裁判長に「一般的にはなされないことだ」と退廷を促され、ようやく退出した。

終了後に締め括り会

 急な雨が降り出した中で、3人の弁護士を囲んで簡単な締め括りの会を行った。

左側から薦田伸夫弁護団長、中川創太弁護団事務局長、そして東京から只野靖弁護士
裁判所脇の小道で締め括り会

 なお、今回も尾崎さんご兄弟が香川から駆け付けて下さって、裁判所前の歩道には大きなバルーン、新作の横断幕などが立てられ、通行人や車への効果的なアピールとなった。

感想アラカルト

当日の参加者からとめる会事務局に寄せられた感想の一部を、順不同で紹介する。

*原告弁護人に拍手・敬服・感謝です

*薦田弁護士・中川弁護士・只野弁護士共に、的確に矛盾点を突いて、法廷ドラマを見ているようで見応えがあり面白かった

*森証人は県の委員をしているのに中立性に疑問を持った。また中川弁護士の追及がまさに急所を突いていて証人がまともに答えられずメッキがはがれる感じだった

*反対尋問の弁護士3人の的を射た尋問と追及力に感動、またチームワークと連係プレーの見事さを感じた

*「これが裁判か!」と印象深かった

*反対尋問が始まると、詳細に科学的に裏付けられたはずのデータの信ぴょう性が本当に音を立てて崩れていくように思えた

*知見に裏打ちされた尋問は聞いていて納得だった

*次回の被告側証人が傍聴席に。ここまでするかという驚きと怒りがあった

*原告席から見ていたら、反対尋問の内容によって、松崎証人の瞬きの回数が違っているのがよくわかった

 なお、第37回口頭弁論は10月10日(火)10時開廷で、2名の証人尋問が予定されています。原告側証人として、巽好幸神戸大学名誉教授(地球科学、マグマ学)が、また被告側証人として、奥村晃史広島大学特任教授(地震地質学)が出廷予定です。