「伊方原発運転差止訴訟」報告・原告集会議事録
日時:2011年12月8日14:20~15:50
場所:松山市民会館 3階 小ホール
参加:140名
1、議長選出:草薙順一 書記選出:高下博行
2、薦田弁護団長より訴状の説明が行なわれました。
3、訴状の内容や今後の取り組みについて質疑応答が行われました。
4、今後の訴訟の展開について説明が行われました。
5、原告団の体制について以下のように推薦・提案が行なわれ承認されました。
共同代表: 須藤昭男
遠藤素子
近藤 誠
渡部寛志
事務局長: 和田 宰
6、選出された共同代表・事務局長より発言がありました。
7、県外参加者より発言がありました。
8、議長より閉会の挨拶がありました。
以下は、説明・発言内容の記録です。皆さんの思いに共感が広がればと思い、できるだけ発言にそって記載しています。集会での思いをしっかり共有し、裁判をたたかい、運動を広げていきたいと思います。(書記 高下博行)
1、議長と書記の選出
司会者より、議長として草薙順一の推薦があり、拍手で承認されました。 あわせて、書記として高下博行の推薦があり、拍手で承認されました。
2、薦田弁護団長より訴状についてポイント説明が行われました。
・請求の趣旨:
住民個人が四国電力を相手に伊方の3つ原子炉の運転停止を求める民事訴訟
・請求の原因:
第1 当事者
第2 伊方原発の概要
第3 伊方原発訴訟
第4 福島第一原発事故
第5 原発の危険性
第6 地震の危険性
第7 指針類改定の必要性
第8 劣化による危険性
第9 プルサーマルの危険性
第10 伊方原発の事故の影響の特質
第11 原発訴訟の過去とこれから
第12 結論
3、訴状の内容や今後の取り組みについて質疑(●)応答(⇒)が行われました。
●訴訟が始まって、伊方原発をとめる世論をどのように高めていくのかが重要になると思います。今、世論は原発を止めると電力が不足すると思いこまされているように思います。裁判の中で原発がなくても電力供給は十分であるという主張はされるのでしょうか。
⇒そういう点はまだ相談はしていません。電気が止まるのと事故が起きることとは同じレベルでは論じられないと思います。我々の裁判は、電気が足らなくなったらやっぱり原発は必要だから運転してもいいですよという裁判ではありません。危険な原発は止めたいということです。仮に電力について間違った宣伝を正すということをするかもしれませんが、補足的なことになると思います。
⇒ 電力会社・国は、電力が足りないとか、福島原発事故は津波による影響であって地震によるものではないんだということをさかんに宣伝していますが、その事については、私たちの責任だと思っています。世論を覆していく、愛媛でいえば県民の5割以上が原発ノーの状態をつくりあげると、知事選でも勝てるし裁判でも勝てると思います。弁護士依存型ではなくて我々が真実を勉強して広げていくということ、そのことが弁護団の裁判闘争を有利にしていくと思います。ドイツの脱原発のような状態を、私たちは四国の中でも伊方の問題で私たちの責任でつくっていくべきだと原告の一人として思います。
●福島原発の除染について、森林等環境を汚染しないで除染できることが信じられない。もし出来るとしても国家予算は破たんするのではないかと思う。除染の予算に関して訴訟に含めるのでしょうか。
⇒ 伊方原発の裁判とは直接は関係ないと思います。
●別紙原告目録についてお尋ねします。すぐに原発が止まらなければ、5年近い裁判をたたかうことになると思いますが、今すぐでなくてもこういう方が原告になっていると知りたいと思います。原告名簿はいただけるのでしょうか。
⇒ 300名の原告名簿についてどう扱うのか、弁護団と相談しているところです。基本的には案内の中で、訴状に記載する等の関係で氏名の秘密が守れない旨お知らせしていますが、団体としていっせいに配るかどうかという点は慎重にすべきだということで、今日は一覧を出していません。弁護団・原告の中でよく議論し、こういう扱いにするということを周知した上で扱っていきたいと思っています。
●この訴状を読んで感激しました。前の伊方訴訟の判例がすごく活かされていると聞いていますが、その点について説明をお願いします。
⇒ 伊方訴訟で最高裁の判決が平成4年にでました。よく読んでみると非常に重要な3つの原則がかかれています。一つは、万が一にも事故を起こしてはならない。原発は多量の放射性物質を製造する装置で、そこから放射性物質が環境にまかれた場合、労働者とか周辺の住民に取り返しのつかない被害をおこすものだから、万が一にでも事故をおこしてはならないといっています。もう一つは、伊方訴訟は行政訴訟で基本的には国がやった設置許可処分が妥当だったかどうか、取り消ししないといけないキズがあったのかどうか、それを審査する裁判でした。考え方としては二つあり、一つは許可処分をした時点での科学的な知見に基づいてOKだったらそれでよい。2つめの考え方は、当時はそれでよかったとしても裁判で審議する時に、それではだめだという新しい知見があれば、最近の知見に基づいて判断しないといけないというふたつ考え方がありますが、最高裁は、最新の科学的知見を用いるべきだという判断をしています。3つめに大事なのは、住民の側が本来原発というのはこういう事故を起こす危険があるということを主張・立証しないといけないというのが裁判の原則ですが、最高裁は、専門知識は国や電力会社にある、しかもその関係資料も全て国とか電力会社にある、だから、原発訴訟の場合には主張立証責任を転換して、国や電力会社の方が安全だということを主張立証できなければ住民が勝訴するという判断をしています。非常に大きな3つの原則を鮮明にしている。弁護団にも入っていただいている海渡雄一弁護士は、福島瑞穂さんの旦那さんですが、この人は当初からずっと原発訴訟にかかわっていて、最近岩波新書から「原発訴訟」という本をだしています。コンパクトな本で、彼の30年の闘いが凝集したような本ですから、是非読んでいただきたいと思うんですが、その本の中で海渡さんがいっていますが、その伊方の最高裁判決にかかわった最高裁の調査官が当時のいろんな文献をみて調査官としては精一杯できるだけの判決を書いたといっていたというエピソードを書いています。その伊方の最高裁の判決は絶対使えると思って、今回の訴訟の骨格にしています。
⇒ 今説明されたことは、訴状41ページの結論にあります。この最高裁の主張立証責任原則により、現在の科学技術水準原則によって、万が一を許さない原則を満たすだけの安全性の主張、立証に被告が成功しない限り伊方原発の運転は差し止められるべきである、ということを裁判では焦点にしています。が、出されているように、電力の問題などは、住民には随分関心がありますし、宣伝もされています。とめる会の方針としては、この裁判を支援することだけでなく、その他さまざまな取り組みをすることにしています。署名もやるし学習会もやる、当然電力問題について考えることもありえますし、水力発電などみても稼働率は低いのでもっと有効活用すべきだと思います。現在2つ原発をとめていますが3つとめて、本気で4県が臨めば原発なしで暮らせる四国をつくることができると思っています。このように、総合的なたたかいが求められるわけですが、裁判は裁判として争点を明確にしてたたかうということになると思います。
●原告団の中には女性の方が、子どもたちのためにたくさん参加されていますが。弁護士の中には女性の方はいらっしゃいますか。
⇒ います
4、質問が打ち切られ、今後の訴訟の展開について説明が行われました。
議長:裁判所は法廷にはいれる原告を制限してくると思いますので、法廷に入る原告については出来れば事務局の方で検討させていただきたいと思います。法廷がおわったあとは必ず報告集会を行うということで、よろしくお願いします。弁護団から第1回弁論期日について説明をお願いします。
薦田:民事の場合には公判と言わなくて弁論といいますが、おそらく年内に第1回弁論期日が指定されて、今日だした訴状が呼び出し状と一緒に四国電力に送られます。第1回の期日は3月か4月頃になると思っています。四国電力の選任する代理人弁護士と調整のうえ、春には弁論が開かれると思います。弁論期日には、原告団からも意見陳述をして裁判所が正面から向き合うようにしてもらうようにしたいと思っています。脱原発弁護団全国連絡会代表の河合弁護士にも来てもらって、全国の状況をふまえて意見陳述をしてもらう予定です。法廷は、一番大きい法廷でも40人ぐらいです。場合によっては抽選になるかもしれませんが、たくさんの方に来ていただいて裁判官がこの事件にきちっと対応するような環境を整備していただけたらと思います。
5、原告団の体制について推薦・提案が行なわれ承認されました。
議長:原告団の役員と事務局を担当してもらえる方々を皆さんの中から選出したいと思います。いかがでしょうか。原告団の体制について、伊方原発をとめる会として検討してきました。とめる会として原告団の体制について推薦したいと思いますが、よろしいでしょうか。(拍手で承認)
議長:訴状の1ページに記載している4名の方を原告団の共同代表として紹介させてもらいます。
須藤昭男さんは、キリスト教の教会の牧師ですが、推薦したい最大の理由は福島県出身であるということです。渡部寛志さんも福島県出身です。今回の訴訟をたたかうにあたって、福島から私たちは目を離すべきでないと思っています。なぜ原発を増設したり、なぜ原発が止まらないかというと、私たちが目をそらしているからだというのが最大の理由です。あくまで福島というものを凝視し続けるのが重要だと思い推薦したいと思います。
遠藤素子さんと近藤誠さんは、八幡浜市ですが、地元でずっと反・脱原発のたたかいをずっとやってこられた方なので、お願いするのが適切ではないかと決めたわけです。
以上4名の方を共同代表として推薦します。一人が原告団長になると、非常に重荷になるんではないかということで、共同代表としました。ただ、その中でも中心になる方は必要だと思いますので、松山にいて年齢的にも須藤昭男さんがよいのではと、議論・検討しました。皆さんのご意見を伺いたいと思います。
議長:いかがでしょうか。かまいませんでしょうか。(拍手で承認)
6、選出された共同代表と事務局長から発言がありました。
議長:先程は記者会見の中でも発言していただきましたが、4名の共同代表の方にこの場でも追加発言をお願いしたいと思います。
須藤:キリスト教の牧師をしています。学生時代に人生に疑問をもち社会に絶望していたときにおばあちゃんに教会に誘われて牧師になりました。松山に赴任してきて40年になります。3.11が起こった時には、故郷の叫びが胸をさしました。呼びかけがあって集会に参加してきましたが、現地の話しを聞くと、どうにもならない。除染をしていますがその水はどこに流れていくのでしょうか。子どもたちへの影響は、10年後20年後どうなるのかわかりません。現地の人たちはほんとうに不安恐怖でいっぱいです。そういった悲惨な事態をこの四国・愛媛に絶対に繰り返してはならないと思います。伊方で事故がおき西風が吹いたら関西地方は全滅ですよね。四国の問題だけではないです。私は年をとり、サッカーでいえばロスタイムですから、言われればなんでもしますが、これまで経験がありません。結果は推薦した方の責任(一堂笑い)ということでがんばります。
遠藤:先程は住民の声をお伝えしましたが、議会の中でも何度となく市長に、原発をやめて自然エネルギーへの転換をずっとやりとりしてきましたが、前の市長も、国や県の意向を充分考えてということで、自分の気持ちをいっさい語らない、ほんとうにもどかしく思ってきました。裁判で勝ってつきつけたいと思います。よろしくお願いします。
近藤:広島県竹原市生まれで瀬戸内海の産湯をつかいました。大学時代に伊方原発の存在を知り、住民運動の支援活動にかかわりました。その後八西連絡会の会員としてこれまで訴訟も含めて原発反対の運動に取り組んできました。同時に伊方町を配達区域とする南海日日新聞の記者としても地域の問題、原発・プルサーマルの問題を取材してきました。当時の伊方原発説明会に参加しましたが、今年になって、四国電力が職員を動員してやらせの誘導質問をしていた、さらに県の説明会でもそれをやっていたことが明らかになりました。いま、全国では原発稼働の動きが強まっているように思います。そういう中で、私たちの運動もひとつの結節点にあり、今回の裁判を皆さんとともに提訴できることを力強く思っています。
渡部:福島原発の北13kmで産まれ育ちました。愛媛大学で学んだ縁もあって、避難先を愛媛県にしました。先ほど弁護団から避難を先行させてやるべきだというお話がありました。何十年ももどれないかもしれない、街づくりも一からしないといけませんが、福島県民の思い・追い出された思いは、もとどおりの故郷にというのが一番の思いです。私も住民票は福島に残したままです。愛媛でも農業をやっていこう、10年20年やっていこうと決めましたが、住民票は移していません。もとどおりの故郷にという思いを貫き通すためには、国から県から住民票を移さないといけないといわれるまでは、そのままにしておきたいと思います。共同代表として、福島から目をそらさないことを許さないためにという一点で自分の役割がはたせるなら、ぜひとも力になっていきたいと思います。
議長:続きまして、原告団の事務局には和田宰さんにお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。(拍手で承認)
和田:伊方原発をとめる会の事務局次長をしています。この7・8年プルサーマル反対の問題でさまざまな市民団体の皆さんといっしょにやらせていただいてきました。それぞれの思い・意見があり、行動の仕方も違っていますが、プルサーマル反対のたたかいを一致してやろうというなかで信頼感が出来てきたように思います。今、共同の大事さということを強く感じています。5月に草薙弁護士から呼びかけられましたが、県民的な広がりが作れるだろうかと思いながら準備をしてきましたが、この間の学習会や総会を持つ中で、皆さんの知恵でひとつひとつ広がりが創られてきました。これからが本格的な裁判のたたかいですが、皆さんに励まされ叱られながら、ともに運動をひろげ勝訴したいと思っています。原告募集については、短期間で組織したこともあって、年明けに再度原告の呼掛けを検討していきたいと考えています。
議長:伊方原発をとめる会は11月3日に発足しましたが、その準備段階で提訴する日を12月8日に決めていました。12月8日は、1953年アメリカのアイゼンアワー大統領が国連で原子力の平和利用をいった日でもあり、その12月8日にあわせて、短期間の原告よびかけを行いました。12月2日の締め切り後に原告希望を言ってこられた方が数名いました。また組織のある方は組織的なことにもあって12月2日に間に合わないということもありました。そのため第二提訴の準備を考えています。
7、県外からの参加者の発言がありました。
高知:原発労働者の労災を救済する会を昨年10月にたちあげました。今回は個人での参加ですが、ぎりぎり原告参加しました。この裁判は希望だと思います。裁判の弁護士の方におんぶに抱っこでお願いしないといけないと思いますが、私たちがしないといけないことは、とめる会を広げることだと思います。とめる会の千円の額を決意し出してもらう人をたくさんにすることをやっていきたいと思います。伊方をとめてよと周りの皆さんに直接言われて参加しました。また福島の南相馬の方の知り合いもでき、福島の方の痛みを本当にわかる、わかりたいという思いでも参加しました。よろしくお願いします。
栃木:宇都宮市にいます。福島第一原発から140キロの距離にいますが、3月11日12日に大量の放射能をかぶりました。現在、低線量被曝を考える講座実行委員会として、県や市に対する要請行動などをすすめています。伊方原発からの距離や地形を考えると、松山にいることのほうが栃木県宇都宮市にいるより恐ろしいことです。実は原発事故は、広島で原爆が落ちたあるいは作られた瞬間から始まってきた終末なのだと思っています。差止訴訟は絶対勝ってほしいと思いますが、差し止めだけでは解決できない、原発がとまっても終わらないので、世界中の原発を全部解体してたまり続ける放射線物質を永久に封印しなければこの事態は終わらないことを考え続けています。この訴訟については絶対勝てると思いますので、弁護団の方にはぜひ頑張ってもらいたいと思います。
高知:八幡浜で小出先生の講演会の時に草薙弁護士から原告になることを直接頼まれたものです。私の故郷は津野町です。高レベル放射性廃棄物の持ち込みを議会が前回一致でしようとした、びっくりして反対運動に飛び込んでわずか2カ月で止めました。その後に東洋町がおこりました。これも、みんなの力でとめました。私は、原発が世界中から亡くなるまで死なないと思っていますので、がんばっていきましょう。
高知:神奈川から妻子4人で最近引っ越してきました。逃げてばっかりじゃかなわんから、是非まけんとがんばったろと思っています。
8、議長から閉会の挨拶がありました
議長:訴状とか今日の様子はとめる会のHP(伊方・とめるで検索)にのっています。私たちはどんなことがあっても伊方原発をとめないといけない、命がかかっています。じつは、このたたかいは、命か金かの争いなんです。命か金かということになった時に、私たちはやはり命を選択するということで頑張っていきたいと思います。そのために、どんなことがあっても福島から目をそらさないことが非常に大事だと思います。HPをみていただきますと、香川紘子さんの詩がのっています。そういう詩も鑑賞してもらいたいと思います。私個人は、四国電力の株主総会では伊方原発をとめよということを言おうと思っています。四国電力は、原発を稼働させることを倫理的にも経済的にもやるべきでない、手を引くべきだと主張したい。いずれにしても伊方原発をとめるという一点で頑張りたいと思います。